シンガポール中医針灸訪問記

2015(平成27)年12月にシンガポールへの旅をしました。
その際、日本人で中医師としてご活躍されている渡邊 勇(わたなべ いさむ)先生のクリニックに訪問してきました。

シンガポールは、羽田から直通で7時間。気候は亜熱帯で12月はたまにスコールのような大雨に見舞われますが、近年の日本の夏の暑さからすると思ったほど暑くなく過ごしやすかったです。治安も良く安心して滞在することが出来ました。

渡邊先生は、日本では放射線技師の資格をお持ちで、シンガポールでは、放射線技師の仕事をしながら、まずは中国語の習得のために語学学校へ1年通われ、そして夜間課程の中医学院に、当時は6年間修学し、中医師の資格をとられたそうです。授業は中国語と英語で行われ、先生の通われた夜間の課程で入学時に100人いた学生は卒業時には30人となり資格をとるまで狭き門のようです。

シンガポールの中医学の制度としては、もともと夜間課程として1983年から5年制として始まり、その2年後の1985年からは6年制となり、2008年からは7年制と授業数の充実が計られ、現代の教育は西医教育時間が増えています。
また、全日課程も1994年に3年制としてでき、2001年からは5年の修学年数となっています。

授業のカリキュラムは、人体解剖学、生理学、病理学、薬理学、免疫学、微生物学、西医診断学、医学統計学、西医内科学等、救急医学、予防医学、遺伝学、医学心理学、栄養学、中医学では、中医基礎理論、中医診断学、中薬学、方剤学、鍼灸学、医古典文献、内経学、傷寒論、温病学、金匱要略、各科(中医内科、外科、小児科、婦人科、五官科(耳鼻咽喉科、眼科)、骨科、推拿学(マッサージ)、中医学史、中医養生史、中薬鑑定学、炮制学、中医病案学等)細分化されているそうです。
また、夜間課程では広州中医大学、全日課程では南京中医大学での学位を取得することも可能もようです。

渡邊先生が勤務されているラッフルズホスピタルは、外科・内科をはじめとした専門科外来システムを導入した380床の総合病院で、外来診療、各種検査、健診、入院、手術等もおこなっている。 日本人向けの日本語での医療サービスも受けられます。
そして海外の拠点もあり、ラッフルズメディカルグループとして香港 および北京、日本では大阪にてクリニックを運営しています。

今回、旅行中のケアのため鍼を受けることが目的で、日本から予約をとり、持病の頚椎症と坐骨神経痛も含め、中医での問診、診断、中国針で治療していただきました。
航空機の関係で、早朝帰国後、その日のうちから治療院での仕事が入っていましたが、針のおかげでとても調子よく過ごすことが出来まして、渡邊先生の針の力に改めて感謝しております。

シンガポールと日本の違いは、シンガポールでは中医薬を扱えるということは、本当に中医をやっていきたいと考えている人にとっては資格制度として大変に恵まれていると思います。

いくつかのアジアの国へ旅行してみると、ツアーのオプションとして送迎つきで推拿や足つぼマッサージを受けられる施設もあり、外国人観光客にも受けやすくする工夫が見受けられます。

日本は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に国家戦略的に、医療特区を新設し、外国人が病院への受診が受けやすくなりように外国人医師の誘致がなされはじめているようです。
鍼灸業界でも、将来的なビジョンを持つような鍼灸師がでることを期待したいと思います。

渡邊先生は、治療や見学など、事前に日本から連絡をして頂いても受け入れていただけるとのことです。
ぜひシンガポールへ訪れる機会がありましたら、相談してみてはいかがでしょうか。

(2016(平成28)年作成)


Watanabe Isamu TCM Physcian TCM Services for Japanese
585 North Bridge Road #02-001 Raffles Hospital Singapore 188770

ラッフルズホスピタル外観 病院受付

ラッフルズチャイニーズメディスン
中国針にて施術中
低周波治療器通電し置針